ABOUT

753プロジェクトって?

行政主体でもなく、大きな資本があるわけでもない。横浜の中山という町に根付き、草の根的に広がって、じょじょに実りつつあるコミュニティ「753プロジェクト」。だけどそもそも知りたいのは、どこで、誰が、何のためにってこと(でしょ?)。答えは本人たちの生声で知るのがいちばん!と、某日行われたメンバーたちの座談会をここに再録。『コミュニティって何だろう?』というテーマで、753プロジェクトのなりたちから「食」「子育て」「住まい」のテーマについて。彼らがめぐりあった中山という地とのかかわり、そしてホントの魅力を話しあいました。

MEMBER

いろんなワケと縁あって、
プロジェクトに参加した人たち。

「中山の空気も土壌も、
歴史や人の営みも、全部ひっくるめて
おいしい食につながる“仕込み”」

今日は、それぞれの視点から『コミュニティって何だろう?』ということをお聞きしたいと思います。まずは『菌カフェ753』の辻一毅さんから。

辻一毅さん

そうですね、コミュニティはつくるものではなく、自然に成っていくものなのかなと感じていて。おいしい食があって、楽しいから中山に暮らすみたいに。
僕の場合は、中山にある自然農法の『虹色菜園』の野菜に惚れ込んで、移住して畑をやるようになったことで、この土地の空気や土壌、さらには歴史や、ここに暮らしてきた人の営みも、全部がおいしい食につながる「仕込み」なんだなって気づいたんです。そういう食の根っこをいっしょに考えていく文化が、派生していったらいいなと思っています。

関口春江さん

辻さんと知り合って、夫(大谷さん)といっしょに『虹色菜園』に通うようになったら、自然の豊かさにびっくりしちゃって。都心から40分で通える気軽さも、採れたての野菜を湧き水で洗ってそのまま食べた経験も、贅沢に感じました。こういう時間をもてるのって、豊かだなって思ったんです。

大谷浩之介さん

距離的に無理がなかったから、中山での暮らしを日常のリズムにも取り入れやすかったですね。都心からほど遠くない距離なのに、田舎の里山のような風景が中山には広がっていて。畑に来ている人たちも魅力的だなと感じて、中山に移住することにしたんです。

齋藤好貴さん

かつて田園風景が広がっていた中山の土壌に、潜在する魅力を感じてくれたんでしょうね。辻さんたちのように、いろいろな考えや想いをもった人たちと「どうしたら、これからの暮らしがよりよくなるだろうか」といっしょに考えることで、中山に新しい活力が生まれたらいいなという想いがあります。

「食からはじまった
楽しいコミュニティづくり」

みんなで『菌カフェ753』を開いたことで、どんなことが派生していったのでしょうか?

辻さん

常に開いている場所があることで、同じようなことを考えてる人や、まったく違う視点をもつ人と交わる機会が生まれて、さまざまな考え方が濃縮されたり、膨らんだりしていきましたね。

関口さん

やっていることや考えていることを伝えるツールになったのかなと思います。カフェに来れば、感じてもらえるというか。

大谷さん

カフェをはじめる前から、畑や醤油作りをやっていたので、そういうことを伝える場所にしようというイメージがあったよね。

関口さん

振り返ってみると、初めて醤油作りを体験した時に、日本各地からいろいろなバックグラウンドを持った人たちと知り合えたことが、新鮮で楽しかった。だから“こういうコミュニティが、自分のそばにもあったらいいな”と思っていたんです。

大谷さん

醤油作りって、一番重要な「搾り」の作業で、どうしてもたくさんの人の手が必要で、みんなで協力しないと作れないところが楽しいんです。
それから、みんなで仕込んだ醤油は、カフェや各家庭の軒下とかで熟成させるんですけど、発酵食だから、場所によって全部味がちがうんですね。それをまたみんなで共有するのも楽しくて。

「料理も子育ても余計なことをしないと
自然とよくなる」

次は「子育て」をキーワードにお聞きしたいなと思うのですが。中山に移住する前に、鎌倉で自主保育を運営されてきた志賀久美子さんは、中山でも自主保育『森っ子』を設立。そのきっかけを教えていただけますか?

志賀久美子さん

もともと鎌倉で自主保育を運営していましたが、夫の転勤がきっかけで中山に引っ越してきたら、『虹色菜園』で自主保育をやらせてもらえることになったんです。自主保育を通じて、私の子どもも元気に育って、私自身にも仲間ができた、その喜びをより多くの親子に広げたいなと思っていました。

自主保育『森っ子』についても、詳しく教えていただけますか?

志賀さん

お母さんたちが当番制で子どもたちを森に連れていき、自然の中でできる限りの遊びをさせて、小さな自信になるような経験を重ねていくようにする、というものです。
例えば、木登りをして泣き出しちゃう子がいたら、大人が抱っこしてあげることもできますが、ちょっとお尻を持ち上げてあげたり、踵の下に足を入れてあげたりして、なるべく自分の力で登る感覚を身につけられるようにします。

辻さん

うちの子も『森っ子』で育ちました。料理も子育ても「余計なことをしないと、自然とよくなっていく」と感じましたね。

志賀さん

自然の中で育っていく子どもたちの変化を、お母さんたちが交代で観ていくので、自分の子と他の家の子との垣根もどんどんなくなっていくんです。

辻さん

そんな風に、一人が一人を観る子育てではなく、みんなで地域の子どもを観るということが、コミュニティに成っていくのかもしれないですね。

齋藤さん

かつての中山は、3世代の家族が多くて、必然的に地域の子どものことをみんなで気にかけていましたね。それが人口流動と高齢化によって、家族構成が変わり、子育て環境も変化してきたのは現実ですよね。
でも、だからと言って、昔ながらの良さを「取り戻そう」ということではなく、今みなさんがやっていることがコミュニティになっていくはずなので、過去を基盤にしながら、新しい社会や活動を「積み上げていく」ことが大切ですね。

川北英樹(アリー)さん

中山は、いわゆる「シェアハウス」を越えて、「シェアライフ」をしていく土地に成っていくのかなと思いました。家という囲まれた範囲から、どんどんはみ出していって、「500m圏内が自分の家」みたいなことが、中山では自然発生的に生まれはじめていますよね。

「やってみたいこと、心に想ったことを
生産して、共有する場」

「シェアハウス」や「シェアライフ」という言葉にもあるように、共有することが、一つのキーワードになるのかもしれないですね。大倉山でも中山でも、シェアハウスに暮らしてきた大谷さんと関口さんにとって、「シェア」によって生まれたものって、どんなものがあったのでしょうか?

関口さん

まだ独身だった頃、大谷さん含め、5人でシェアハウスに暮らしていました。みんなの日々の出来事を語り合うことで、自分の生活範囲の中では経験しないようなことも聞けて、5人の人生をシェアしているような感覚でした。人生を5倍楽しんでいるみたいな(笑)。
そう考えると、『753市』が、一つのコミュニティになっているのかなと思います。参加してくれている方たちは、いろんな想いを伝える手段として出展してくれています。いろんな価値観の人たちがここで出会って、また別の形でコラボがうまれたり。そういうコミュニティっていいなと思います。

大谷さん

「シェアすること」と「所有すること」ってあると思うんですけど、所有を放棄すると、色んなものが入ってくる可能性が広がると思いました。だから、どんどん異なる価値観を入れられる余地を残しておくというか、誰が何をやってもいいよと許容できる自由さみたいなものが、コミュニティを縁取っていくのかなと思いました。

辻さん

中山って、何かやると、いろんな人が関わってくれて「あれもやりたい!これもやりたい!これもできるじゃん!」って、どんどん膨らんでいくから、いいコミュニティだなって感じています。

アリーさん

そういう色んな「かてい」を開くことが、キーワードかも。「過程・家庭・仮定」を、みんなで共有するコミュニティが、中山なんだと思いました。

志賀さん

完成品のまちではないからこそ、やりたいことに思い切って挑戦できる。それを周りの人が応援してくれる。それが中山の良さです。森っ子を立ち上げたのは転居して半年後、生まれたての娘を抱えながら。『森っ子』の母たちに感謝していただき、挑戦した甲斐があったと感じています。

齋藤さん

それぞれの想いや多様性を取り入れながら、どんどん熟成させていくことで、新たなコミュニケーションが生まれて、新たな人が新しい動きを築いていくことを大切にしたいですね。20年前にはじめた『なごみ邸』も、「こういう使い方をしてください!」と投げるのではなく「どういう風に使ったらいいだろう?」と問いかけて、いっしょに考えていくことに重きを置いていましたから。
そんな風に、自分のいいと思うこと、やってみたいこと、それぞれが心に想ったことを「生産して共有する場」が、コミュニティなのかな。そんなふうに思います。

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